書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

日本文学

山形石雄『戦う司書と神の石剣』

今日はまとめてラノベ三冊。 『戦う司書』シリーズの第四巻となるこの本は、武装司書ミレポックと教団の裏切り者アルメが、第一巻からしばしば顔を見せていた謎の本屋ラスコールを追う、という話。第三巻『戦う司書と黒蟻の迷宮』は最強VSナンバー2という…

稲垣足穂『一千一秒物語』

キャラクターもなし。ストーリーもなし。緻密な構成も、洗練された修辞もいらない。そんなものなくとも面白い小説は書けるものなのだ。一千一秒物語―稲垣足穂コレクション〈1〉 (ちくま文庫)作者: 稲垣足穂出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/01メディア…

竹宮ゆゆこ『とらドラ!』

目つきが悪いため怖れられているが本当は大人しい男・竜児と、小柄ながら噛みつき屋な性格で怖れられている大河が、ひょんなことからお互いの恋のために協力しあうようになる、というラブコメ小説。恋愛に発展しそうで発展しない竜児と大河の微妙な関係が売…

山形石雄『戦う司書と黒蟻の迷宮』

なんだかんだで三冊目。戦う司書と黒蟻の迷宮 (戦う司書シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)作者: 山形石雄,前嶋重機出版社/メーカー: 集英社発売日: 2006/04/25メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 21回この商品を含むブログ (80件) を見る 死者はすべて「本」…

三島由紀夫『絹と明察』

恥ずかしながら初ミシマ。絹と明察 (新潮文庫)作者: 三島由紀夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1987/09/25メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (13件) を見る しかし美しかるべき絶妙の瞬間を駒沢は裏切った。 寿司をつまむ手こそ休…

谷崎潤一郎『武州公秘話』

というわけで、とりあえず谷崎から。 うん、面白い、面白いよ? でも、なんか普通感がある。物語にはドキドキするけど、人物にはドキッとする場面がない。あんまり本を読まない人に薦めるなら谷崎だけど、幻想・耽美文学オタクに薦めるなら谷崎より泉だな。…

山形石雄『戦う司書と雷の愚者』

プロットが上手いから面白く読ませてくれるんだが、前巻に比べていまひとつ新味に乏しい気がする。文章の平板な感じは、前巻に比べて多少改善されているかな。戦う司書と雷の愚者 BOOK2 (集英社スーパーダッシュ文庫)作者: 山形石雄,前嶋重機出版社/メーカー…

冲方丁『スプライトシュピーゲル 2』

期待通りのクオリティ。面白さの原因はやっぱり速さ&熱さ、かな。『オイレンシュピーゲル』2巻にひけを取らぬ燃え燃えな展開には手に汗握ることしきり。中でも一番熱いのはモリサンこと杜麟太郎だろう(カッコイイ老人を描ける作家は面白い作家である、と…

山形石雄『戦う司書と恋する爆弾』

文章はなんだか垢抜けない感じがするし、人間爆弾という発想にも新鮮さはないけれど、物語構成はすばらしい。結末への持っていき方は鮮やかの一言に尽きる。続刊も読む……と思う。戦う司書と恋する爆弾 (戦う司書シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)作者: 山形…

冲方丁『オイレンシュピーゲル弐』

連作集だった一巻と違って長篇になっているため、読み応えがぐっと増している。容赦ない展開と激烈な戦闘描写には思わず手に汗。一つ不満を言うと、せっかくロシア兵が登場しているのだから、一度でいいから彼らに「ウラー!」の掛け声を叫ばせて欲しかった…

秋田禎信『閉鎖のシステム』

黒さんが「ライトノベルの奇書」と呼んでいた理由が分かった。結末と挿絵はたしかに奇々怪々。『魔術師オーフェン』や『エンジェルハウリング』も読んでみようかしらん。閉鎖のシステム (富士見ミステリー文庫)作者: 秋田禎信,黒星紅白出版社/メーカー: 富士…

杉井光『火目の巫女 2』

一巻に比べるとダークさというか救いのなさが半減しているのが残念。そう感じるのは、僕の心がすさんでいるからなのかね。あ、端役だけど、為子は良い味出してる。三巻もそのうち読むよ。火目の巫女〈巻ノ2〉 (電撃文庫)作者: 杉井光,かわぎしけいたろう出版…

中村九郎『樹海人魚』

根っこのところがライトノベルそのものという感じがするので、奇才とまで呼ぶにはちょっと。でもまあ、細かいところで、いいセンスしてるなあと感じさせるものはある。『樹海人魚』というタイトルもなかなか良いしね。次作も出たら買ってみるつもり。樹海人…

冲方丁『オイレンシュピーゲル 壱』

姉妹篇『スプライトシュピーゲル』に比べると、いくらか普通に近い文体で書かれている。この巻はキャラの顔見せ段階だから、まだ評価はしかねるかな。『オイレン』『スプライト』双方の続刊がどういう展開・関連を見せるか、期待したいところ。オイレンシュ…

杉井光『火目の巫女』

前半は百合萌えお気楽な雰囲気(や、主人公のコンプレックスやら葛藤やらはあるんだが)だったのが終盤一転、容赦ない展開で読ませる読ませる。で、あの残酷な結末。――うむ、これはいいぞ。『お留守バンシー』とかのまったりしたのも悪くないんだが、やっぱ…

筒井康隆『巨船ベラス・レトラス』

巨船ベラス・レトラス作者: 筒井康隆出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/03メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (68件) を見る ではしかたがない、というように鮪はまた錣山を見つめた。「わしはずいぶん苦しんできた。その苦…

ろくごまるに『食前絶後!!』

調味魔導という設定の奇矯さはもとより、文章なんかも一般的な(というほど読んじゃいないが)ライトノベルとはちょっと違った雰囲気でおもしろい。こういうのがあるからこそ、ラノベ漁りをやる甲斐があるってもんだ。ともあれ、いくら古くても、こういう良…

尾関修一『麗しのシャーロットに捧ぐ』

『百歳の人』に続いてまたもゴシックホラー。書籍の形態から言えば硬軟両極端な感じではあるけど(実はイラストの枚数は『百歳の人』のほうが多い。まあ、どちらの絵師さんもいい仕事をしていることには違いはないけど)、『百歳の人』は「不死身の放浪者」…

古橋秀之『冬の巨人』

充分おもしろかったけど、期待が大きいぶん、感想にも苦言が多くなってしまう。「黒古橋カムバック!」と叫びたい気分だ。いずれにせよ次作品は楽しみにしている。冬の巨人 (徳間デュアル文庫)作者: 古橋秀之,藤城陽出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2007/0…

中村九郎『アリフレロ』

ライトノベル書評系のサイト各所で奇書と評されていたから興味を持って買ってみたけど、うーむそれほど変でもないなあ。キャラの立て方とか、視点の扱い方とかは面白いし見るべきところがあると思うけれど、ビリヤードのルールに沿って人や人でない連中が殺…

谷川流『涼宮ハルヒの分裂』

『涼宮ハルヒの分裂』も読了。5巻以降、ちょっとマンネリの気配が漂い始めたところへ、かなり明確な敵対勢力を投入して読者の緊張を煽っている感じ。キョンの旧友・佐々木さんが女性だってのはなんとなく予想がついたけど――セリフ回しが病院坂黒猫(西尾維…