書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ろくごまるに『食前絶後!!』

 調味魔導という設定の奇矯さはもとより、文章なんかも一般的な(というほど読んじゃいないが)ライトノベルとはちょっと違った雰囲気でおもしろい。こういうのがあるからこそ、ラノベ漁りをやる甲斐があるってもんだ。ともあれ、いくら古くても、こういう良質な作品を絶版にしちゃいかんな〜(古いって言っても、たかが13年前だし)。

食前絶後!! (富士見ファンタジア文庫)

食前絶後!! (富士見ファンタジア文庫)

好きでもない女から告白されて、男はそれを受け止められるか?
答えは、もちろんイエス
嫌いな女でない限りは絶対にイエス
ここでのモラルとは、『少なくとも嫌いな女にはノーと言う』である。(9ページ)

 数学が趣味の高校生・北浜雄一は、幼馴染の立野徳湖から「さっぱりしたアスファルト味」の弁当を食べさせられたために、味覚を利用して人間の身体機能を強化する「調味魔導」の継承者争いに巻き込まれる。その争いをしのぎ切ると、今度は視覚や聴覚などを利用する五感魔導の使い手たちの抗争に関わることに――。

 スラップスティックなアクションもの。昨今流行の「学園異能」ものの原型と言えるかもしれない。珍妙な設定と戦闘描写の濃さ、キャラクターの掛け合いが作品の見所。特に雄一と徳湖の掛け合いは実にノリがよく、会話の面白さで読ませるものとしては一級品と呼べるだろう。要所要所にシリアスな展開を入れることで物語を引き締めているのもよい。が、結末が御都合主義に感じられるのは残念である。
 ライトノベルとしてはかなり古い部類に入るが、現行の作品群にもひけは取らない良質な小説だと思う。