書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

マリウス・フォン・マイエンブルク『火の顔』

 ドイツ現代劇・9冊目。
 これもちょっと前に読りょ(以下略)。ここのところまったくもってダメだ。7月に入って無気力さが増してきていていけない。

火の顔 (ドイツ現代戯曲選30)

火の顔 (ドイツ現代戯曲選30)

こうじゃなきゃいけないなんて考えるなら、それは間違ってる。しがらみを断ち切って、一人になれ。他人に吹き込まれた考えは捨てて、隙間を閉ざせ。外界に向ける触覚なんかいらない。武器だけがあればいい。クラゲのように目もなく閉じたままでいろ。近づく者は平然と焼け。口を閉ざし、耳も閉ざし、やれ!(83ページ)


 平凡な一家族の破滅を描いた戯曲。両親および姉オルガとともに暮らす思春期の少年クルトは、不自由なく生活しているものの、両親とのコミュニケートがうまくいっていない。やがて彼は放火を好むようになり、姉と近親相姦し、ついには両親を撲殺して、自らの身体にガソリンを注いで火をつける。

 わたしのきらいな青春ものである。主人公のクルトは、基本的には、大人の(あるいは、他人の)汚さを憎悪する思春期の若者という、「伝統的な」キャラクターである。この手のキャラクターが出てくると、またか、と少しうんざりするのである。ただ、サガンサリンジャーなど、もう賞味期限が切れかけた古い作家の登場人物に比べれば、感覚がわたしに近い分、いくらか面白く感じられるだけである。
 この作品で注目すべきところは、(解説でも指摘されているが)クルトのみならず、彼の両親、姉オルガ、オルガの彼氏パウル、みながみな未成熟で、互いにコミュニケートできていないのを描いているところだと思う。
 また、犯罪を扱っているのと、分量が短いのとで、物語としてはまずまず緊張して読める。「ドイツ現代戯曲選」シリーズの中ではかなりわかりやすく、読みやすい部類。