ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『輝くもの天より墜ち』
ティプトリーを読むのははじめて。前々からこの作家のものを何か読もうと思っていたところ、ちょうど未訳長篇が翻訳出版されたので、この機会に試してみた。

輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF テ 3-6) (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア,James Tiptree Jr.,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/07/25
- メディア: 文庫
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舞台はSFだが話はどちらかというとミステリとかサスペンス寄り。前半のゆったりした語り口の中で張り巡らされた伏線が、中盤の山場から後半の結末部分までに鮮やかに組み合わせられていく技巧は見事。そういう積み上げもあってか、山場の部分は本当に盛り上がる。
そういうわけで、面白いことはまあ、そこそこ面白いのだけれど、「普通によくできたSF」といった印象で、この人独自の凄さのようなものは感じられなかった。幕開け部分と結末部分は、退屈とまでは言わないまでも、ちょっとゆっくりし過ぎであるとも思う。短篇や中篇のほうで名高い作家だそうだから、そういう作品を先に読んでみるべきだったかも。