書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

エルフリーデ・イェリネク『汝、気にすることなかれ』

 ドイツ現代劇、十三冊目。

汝、気にすることなかれ―シューベルトの歌曲にちなむ死の小三部作 (ドイツ現代戯曲選30)

汝、気にすることなかれ―シューベルトの歌曲にちなむ死の小三部作 (ドイツ現代戯曲選30)

 「女魔王」「死と乙女」「さすらい人」の三部からなる戯曲。「女魔王」は死んだ女優が、「さすらい人」はイェリネクの父がえんえんモノローグを続け、「死と乙女」は小人たちとはぐれた白雪姫が狩人と対話するという内容。

 ――ううむ、この作品には歯が立たなかったなあ。
 論創社の「ドイツ現代戯曲選」にはなかなか読み応えのあるハードな作品が多いが、この戯曲は今までに読んだ十三冊の中で最難関だったと思う。同じイェリネクの『レストハウス』も手ごわい読み物だったが、いちおうキャラクターとか軸になる話というのはあって、それを頼りに読み進んでいくことができた。がこちら『汝、気にすることなかれ』は隠喩や引用にあふれている(らしい)長大な独白が作品の大部分を占めていて、正直なところ、どこからどう取っ組めばいいのやら見当がつかなかった。個々の文意は明瞭なのだが、前後のつながりや展開がつかめないでおわってしまった。