ルネ・ポレシュ『餌食としての都市』
ドイツ現代劇、十四冊目。
- 作者: ルネポレシュ,Ren´e Pollesch,新野守広
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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「ぼくは現実空間にファックされる、そしてその空間というのがいまいましいドイツ銀行なんだ。」
「そうか、おまえはドイツ銀行にファックされるんだな、だったらこれは確かにポルノだ。でも、おまえはドイツ銀行の中でファックされるんじゃない! ヴァーチャルにやられるにすぎないんだ! このクソ銀行は世界をグローバルにかけまわっているんだから!」(65ページ)
4人の男女が集まって社会に対する不満と憎悪をぶちまける。解説などを見てみると、登場人物の罵りあいを通して、ネオリベラリズム政策下の資本主義・管理主義社会を批判することが主題になっているらしい。
この叢書の例によって例のごとく変な戯曲である。途中で「クリップ」と称される短いパフォーマンス(どんなパフォーマンスかは脚本には書いてない)が入るほかはセリフのみで構成されており、ト書きはまったくない。そのセリフがこれまた変で、論説口調だったのが突然絶叫調にかわったり、卑猥語を連発したりする。
私はこれを社会批判の作品として読んだのだが、ドイツ社会を風刺する句が多いらしく、ドイツの現状に疎い私にはどうもぴんとこなかった。むしろ登場人物のうるさいくらいのやりとりをコメディとして楽しむような姿勢で読んでいたら、かえって得るところが多くなったかもしれない。短い作品なのでそのうち再読したい。