アレクセイ・トルストイ『ドン・ジュアン』
このあいだ古本屋でたくさん戯曲を買い込んだので、本日よりしばらく戯曲祭りを開催。つんである戯曲作品もついでにいくつか消化しておこう。
まずは三人のトルストイのうち個人的にお気に入りのA.K.トルストイ。ちなみにA.N.トルストイは未読。L.N.トルストイは高校時代に『戦争と平和』を読んで以来敬遠中。
- 作者: A.K.トルストイ,柴田治三郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1951/12/10
- メディア: 文庫
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そうだ、そう決めた。立て、ドン・ジュアン!
進め、破壊の天使として!(66ページ)
詩劇。地上において永遠なるものを求めるよう、悪魔によって宿命づけられたドン・ジュアンは、女性への情熱と幻滅を繰り返したのち、ドンナ・アンナに恋する。結婚寸前までこの話はすすむが、ドン・ジュアンは彼女に幻滅するのを恐れ、やがて自らの手で縁談を破談にしてしまう。破滅へ進むドン・ジュアンを待ち受ける結末は……。
あのロマンチックな歴史小説『白銀公爵』の作者の手にかかれば、かのセビーリャの色事師も、敢えて天地の掟に背く反逆の英雄となる。高潔さと傲慢、情熱と不安を持ち合わせたドン・ジュアン像はたいそう印象的で、感銘を残す名ぜりふもたくさんある。三枚目の従僕レポレッロ、現実主義者の黒人ボアブジルなどのキャラクター対比もいいし、ドン・ジュアンとレポレッロの掛け合いも楽しい。プロローグと第二部の中盤にある天使たちと悪魔の会話の部分は若干たるい感じがするが、ほかのところにはケチのつけようがない。まったく期待通りの良作だった。
デュマとかユゴーといった作家が好きな人には、A.K.トルストイも合うと思う。比較的手に入りやすいのは本作と『白銀公爵』である。両作品を強く推しておく。