書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

フェデリコ・アラバール『戦場のピクニック』

アラバール戯曲集〈1〉戦場のピクニック (1968年)

アラバール戯曲集〈1〉戦場のピクニック (1968年)

「英雄って………どんな風だっけ?」
「訳ないさ、肉屋の親父が色男を気どってる時の真似すりゃいいんだ。(19ページ)

 アラバールの戯曲集は思潮社から四分冊で刊行されており、その第一巻である本書は表題作である処女戯曲「戦場のピクニック」をはじめとする短めの作品(10〜50ページほど)8編を収めている。

 ジャンル的には、「不条理劇」に属するのだろう。即物的な暴力や性愛、頻繁に描写される排泄物、脈絡のない死、繰り返しが多用される展開。アラバールはこれらの諸要素を組み合わせて絶妙の気持ち悪さと乾いた笑いを提供してくれる。
 特に表題作「戦場のピクニック」は、戦場にいる一人の兵士のもとへその両親がピクニックにやってくるという秀抜な設定で、非日常の中で繰り広げられる日常的な会話がなんとも可笑しい。短い作品でもあり、「不条理文学」と聞いただけで頭痛がしてくるような人も楽しく読めるだろう。
 八篇全部が面白かったわけではない。「卵の中のコンサート」はよくわからなかったし、「祈り=ミスチックドラマ」は作為がかちすぎて諧謔に欠けるように思えた。が、まあ、古本屋で見つけたり、復刊されることがあったりしたら、買って読んでみる価値はあるだろう。


 余談ながら、表紙のデザインは非常に秀逸だと思う。

 この歪んだ驚愕と恐怖の表情が、内容とぴったりマッチしていてたいへんよい。