アレクサンドル・ガーリン『ジャンナ』

- 作者: アレクサンドルガーリン,Aleksandr Galin,堀江新二
- 出版社/メーカー: 群像社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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「一人でこれから何をするつもりですか?」
「私? 私はこれから窓のそばに行くの」(131ページ)
哲学者の老未亡人ジャンナは、グリゴーリイという若者に生活の面倒をみてもらっていた。ところがグリゴーリイはほかの老人の家にも出入りしていた。グリゴーリイを出入りさせている一人・スヴェトラーナと知り合ったジャンナは、グリゴーリイが遺産目当てではないかと疑う。
二幕のリアリズム系の社会劇で、登場人物四人のうち三人は老人、テーマは介護というまったくもって地味な作品ではあるのだが、これが意外と、なかなかおもしろい。もちろん、テーマが現代的であるということもあるのだが、それに加えて主人公と三人の老人のキャラが立っているところ、登場しない人物が電話などで影響を与えてくるという仕掛け、また会話の中で緊張と興奮が高まっていく様子(ここらへんはいかにもロシア文学風味だ)、などが原因で、作品全体にどことなく緊迫した空気が漂い、読んでいるほうもつい続きを気にしてずいずいと進んでしまう。
また巻末にはロシアの現代戯曲の風潮や主な作品の内容紹介などが附されており、現在のロシア演劇がどういう方向を向いているのか知ることができる。この部分も必見である。