エウリピデス『タウリケのイピゲネイア』
今日はイピゲネイア三連発。まずは古典劇。何気にエウリピデスはいままで未読だったり。
- 作者: 松平千秋
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/05/01
- メディア: 文庫
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「まあ、何というわるい正義を、よくもしおおせたことでしたのねえ」
「でも正義にしても、神々からは幸運を恵まれてるとはいえないのです」(118ページ)
父アガメムノンによりアルテミスへの生贄に捧げられたイピゲネイアは、すんでのところでアルテミスに救われたのち、タウリケの地で神殿の巫女を務めていた。この地には、流れ着いた異国の民を女神への生贄に捧げる慣わしがあった。ある日、アガメムノンの子オレステスが、母殺しの罪から復讐の女神に追われ、タウリケへやってくる。
アイスキュロス劇でお馴染み、血みどろアトレウス一族の最後のエピソード。父が娘を殺し、妻が夫を殺し、子が母を殺したその次に、今度は姉が弟を殺すのか――いや、そうはならないことは知っているのだけれど、スピーディなストーリー展開とテンポのよい対話につられてついぐいぐいと読み進めてしまった。いかにも古典らしいシンプルなおもしろさを持つ良作。