書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

フォルカー・ブラウン『自由の国のイフィゲーニエ』

 で、最後に現代劇をと。例のドイツ現代戯曲選、これで18冊目。

自由の国のイフィゲーニエ (ドイツ現代戯曲選30)

自由の国のイフィゲーニエ (ドイツ現代戯曲選30)

わたしにごきげんようと言って。もう一度言って、ごきげんようと。(30ページ)

 「鏡のテント」「自由の国のイフィゲーニエ」「野外オリエンテーリング」「古代の広間」の四場面からなる演劇テクスト。イフィゲーニエのほか、エレクトラアンティゴネのエピソードを踏まえつつ、社会風刺の言葉を投げ込む。

 伝統的な戯曲ふたつを読んでからすぐこれに取り掛かったので、あまりのアウトラインの違いに思わず面食らってしまった。ト書きとセリフの区別はなく、個々のセリフを誰が喋るかという指示もない(もちろん、前後の文脈から誰が話しているか特定できる個所もあるが、それが曖昧なところや、いつの間にか入れ代わっているところもある)。ストーリーのようなものも目に見える形では現れず、(ある程度の脈絡はあるものの)断片的な言葉が次々と投げ込まれる。
 作品世界についていくのはなかなか大変なのだが、それにしても一つ一つの言葉の力強いことといったら!