フォルカー・ブラウン『自由の国のイフィゲーニエ』
で、最後に現代劇をと。例のドイツ現代戯曲選、これで18冊目。

- 作者: フォルカーブラウン,Volker Braun,中島裕昭
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
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「鏡のテント」「自由の国のイフィゲーニエ」「野外オリエンテーリング」「古代の広間」の四場面からなる演劇テクスト。イフィゲーニエのほか、エレクトラやアンティゴネのエピソードを踏まえつつ、社会風刺の言葉を投げ込む。
伝統的な戯曲ふたつを読んでからすぐこれに取り掛かったので、あまりのアウトラインの違いに思わず面食らってしまった。ト書きとセリフの区別はなく、個々のセリフを誰が喋るかという指示もない(もちろん、前後の文脈から誰が話しているか特定できる個所もあるが、それが曖昧なところや、いつの間にか入れ代わっているところもある)。ストーリーのようなものも目に見える形では現れず、(ある程度の脈絡はあるものの)断片的な言葉が次々と投げ込まれる。
作品世界についていくのはなかなか大変なのだが、それにしても一つ一つの言葉の力強いことといったら!