書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

清野静『時載りリンネ!』

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

女の子はいつも颯爽としてなくっちゃ。(247ページ)

 食物を食べる代わりに書物を読むことで生命を維持し、時間を止めることもできる「時載り」一族の少女リンネと、幼馴染の語り手・久高らが、偶然手に入れた一冊のどうしても読めない本をめぐって冒険する。

 出版されたときに様々なブログ・サイトで高い評価を受けていたので気になっていた本。ただ、それらのブログでの褒められ方を見て、「健全なジュヴナイルじゃないんだろうか、食い足りないんじゃないか」とも思っていた。その心配は当たってしまって、私個人の趣味からすれば、物足りない小説ではあった。毒気というか、強烈な個性が足りない気がしたので。
 といっても、良質な小説であることは間違いないし、お腹一杯にはならないまでも、まずまず楽しめた本ではある。まず文章がよい。軽すぎもせず、野暮ったくもなく、すっきりとして読み心地がいい。描写もなかなか佳で、特に第八章の幻想描写は至妙。キャラクターのうちでは、司馬遊佐、ジルベルト、語り手の祖父楠本南涯など、脇役陣に魅力がある。
 それにしても、やはり一冊の本をめぐる物語というのは面白いね。