書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

カトリン・レグラ『私たちは眠らない』

 ドイツ現代劇、19冊目。

私たちは眠らない (ドイツ現代戯曲選30)

私たちは眠らない (ドイツ現代戯曲選30)

「みんな経験してることだよ。ちょっと新鮮な空気を吸ってくるって言って、本当は三部屋ほど先へ行き、空いた椅子に座って、十分間寝るんだ」
「そうよ、みんな人間なんだから!」
「でもそれを誰かに面と向かって言ってみな!」(17ページ)

 舞台はメッセ会場。年齢も仕事も違う六人の登場人物が、それぞれ自分の中にたまっている社会への不平不満をぶつけあう。ニューエコノミー社会を風刺した作。

 ――というような作品の説明を見て、興味を持って読めるかどうか不安に思っていたのだけれど、案の定だめだった……。せめて筋書きらしきものでもあれば、それを追って読んでいけるのだけれど、登場人物がえんえん不満を述べ合うばかりで、話の展開がよくつかめない。その不満の内容も、どうもありきたりで、風刺としても直截すぎてよろしくないように思える。ほかに評価すべきなのは文章の勢いだが、これも前に読んだ『エレクトロニック・シティ』のスピード感に比べると若干落ちるように感じた。直截的な社会批判のせりふの奥に何か仕掛けが隠してあるような気もするのだけれど、私の眼では見抜けなかった。