ウィリアム・シェイクスピア『ジョン王』
さぼり中。
- 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1983/10/01
- メディア: 新書
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多少はお追従の気味がないと、この世にあっては
受け入れられず、いわば時代の私生児になるしかない。
そしておれは、その気味があろうとなかろうと、
私生児だ、だからおれは、服装、外見、紋章といった
外なる飾りで見せかけるだけでなく、内なる心の奥底から、
時代の口にあうような甘い、甘い毒を提供する義務がある。(22ページ)
不当にイギリスの王位を継承したジョンに対し、フランス王フィリップは正当な太子アーサーを担いで戦いを挑む。ジョンは兄リチャードの私生児を従えてフランス王と対峙。二転三転する戦況と外交関係。やがてアーサーはジョンの俘虜となるが……。
シェイクスピアの歴史劇のなかでも話題になりにくい作品だが、読んでみたら案外おもしろかった。いや、アーサーとヒューバートの会話の場面のメロドラマっぷりは失笑ものだし、アーサーやジョンなど主役級の人物の死なせ方なんかはかなりまずいと思う。しかし筋の展開は速いので話がだれることはないし、ジョンの性格もよく書けていると思う。それに何より私生児のキャラクターがいい。出てくるたびに軽妙辛辣なセリフを飛ばす口の達者な男であり、しかもいざ合戦となれば先頭に立って大活躍。陰湿な外交・謀略が話の中心になっているこの芝居の中で、ひとり颯爽とした存在感を見せてくれる。