ウィリアム・シェイクスピア『シンベリン』
- 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1983/10/01
- メディア: 新書
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つまり、王の一人娘と結婚したという一件で、あの男は本人の値打ち以上に買いかぶられているのだ、その姫の分だけな。(27ページ)
ブリテン王シンベリンは王女イモージェンを王妃の連れ子クロートンと結婚させようとするが、イモージェンは愚鈍なクロートンを嫌ってポステュマスと結婚する。これが王の怒りを買い、ポステュマスは追放の憂き目にあう。イタリア人ヤーキモーはポステュマスと口論し、イモージェンを誘惑できるか賭ける。ヤーキモーは王女の誘惑には失敗するが、策略で王女の腕輪を盗み、成功の証拠とする。激怒したポステュマスはイモージェンを殺すと息巻く。これを知らぬイモージェンはポステュマスに会うため宮廷を逃れる。一方、ローマがブリテンに宣戦を布告し、その軍隊はウェールズに迫りつつあった。
ロマンス劇。追放されるヒーローに、男装して家出する王女。身分を知らずに育った王子に、愛すべきバカ殿。策略ならば毒殺あり窃盗あり。果てには戦争もあり。とかく複雑多彩な内容と、次から次へ新しい展開を繰り広げることで、読者を飽きさせない作品。
――ではあるものの、質が高い作品かといえばそうでもない。とりわけまずいのは広げすぎた風呂敷のたたみ方、もといさまざまな問題が一挙に解決される第五幕で、とんでもなく強引。王妃の死なせ方なんかは、もう少しなんとかできなかったかと思わずにはいられない。
つまらなくはないけれども、あまり余韻の残らないものではあると思う。