書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ウィリアム・シェイクスピア『シンベリン』

シンベリン (白水Uブックス (34))

シンベリン (白水Uブックス (34))

つまり、王の一人娘と結婚したという一件で、あの男は本人の値打ち以上に買いかぶられているのだ、その姫の分だけな。(27ページ)

 ブリテン王シンベリンは王女イモージェンを王妃の連れ子クロートンと結婚させようとするが、イモージェンは愚鈍なクロートンを嫌ってポステュマスと結婚する。これが王の怒りを買い、ポステュマスは追放の憂き目にあう。イタリア人ヤーキモーはポステュマスと口論し、イモージェンを誘惑できるか賭ける。ヤーキモーは王女の誘惑には失敗するが、策略で王女の腕輪を盗み、成功の証拠とする。激怒したポステュマスはイモージェンを殺すと息巻く。これを知らぬイモージェンはポステュマスに会うため宮廷を逃れる。一方、ローマがブリテンに宣戦を布告し、その軍隊はウェールズに迫りつつあった。

 ロマンス劇。追放されるヒーローに、男装して家出する王女。身分を知らずに育った王子に、愛すべきバカ殿。策略ならば毒殺あり窃盗あり。果てには戦争もあり。とかく複雑多彩な内容と、次から次へ新しい展開を繰り広げることで、読者を飽きさせない作品。
 ――ではあるものの、質が高い作品かといえばそうでもない。とりわけまずいのは広げすぎた風呂敷のたたみ方、もといさまざまな問題が一挙に解決される第五幕で、とんでもなく強引。王妃の死なせ方なんかは、もう少しなんとかできなかったかと思わずにはいられない。
 つまらなくはないけれども、あまり余韻の残らないものではあると思う。