書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

李文烈『われらの歪んだ英雄』

われらの歪んだ英雄

われらの歪んだ英雄

 中篇三つ。表題作は、田舎の小学校でクラスを理不尽に支配する少年ソクテの栄光と没落を描く。「あの年の冬」は大学を離れて山村を彷徨する青年の話、「金翅鳥」は死に近づいた老書家が、師との屈託や自身の半生を回想する話。

 大傑作『皇帝のために』と比べると、長さのみならず内容の濃さの点でも小粒で地味な印象を受けるが、巧みな筋運びで三編とも一息で読めるだけの面白さはある。表題作は、主人公ソクテと語り手ビョンテ以上に、その他大勢の人物の描写がなかなか容赦なくてうまい。
 控えめな語り口とほろ苦い自嘲の調子も印象は悪くないんだが、やっぱり、『皇帝のために』のような壮大で風刺と諧謔を押し出した内容のほうが好みだ。
 ともあれ、「韓国文学でいい小説はないか」と探している人には、李文烈の小説を推す。特に『皇帝のために』を改めて強く推しておきたい。