アサウラ『ベン・トー』
ベン・トー 1 サバの味噌煮290円 (スーパーダッシュ文庫)
- 作者: アサウラ,柴乃櫂人
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/02/22
- メディア: 文庫
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「温かなソイジョイによって僕が真のジャズマンとなり、今、幸せに包まれながら生涯を閉じたんだ」(49ページ)
生活資金の窮乏に悩む高校生・佐藤洋は、スーパーで半額の弁当を購入しようとするが、他の客たちに叩き出される。夕方の弁当売り場では半額弁当を求める者たちの戦場だったのだ。佐藤はそのスーパーでたまたま知り合った白粉花とともに二度三度と弁当獲得に挑戦するが失敗し、挙句の果てに弁当争奪戦の覇者・槍水仙に手ひどく罵られる。納得のいかない佐藤は、槍水の主宰するHP同好会のドアを叩く――。
滑稽さを出すうまい方法の一つとして、言葉とシチュエーションのギャップを用いる、という手がある。「だから行く」「嫌だと言ったら」「奴が来た」「オレたちが命をかけて時間を稼ぐ」――等々のどこかで聞いたことのある熱い台詞の数々が、弁当の争奪というお馬鹿な場面の中に置かれているため、読んでいて可笑しくってたまらない。また、ギャップがあって可笑しいといっても、台詞の熱さが減るわけでもないので、ここに笑いと燃えが一体となった、一傑作が出来上がったわけだ。
もちろん、その笑いと燃えはキャラクターが立っているから際立つので。主人公格の佐藤洋、白粉花、槍水仙はもとより、茶髪の女子高生、顎髭の男、主婦<<大猪>>などの名無しのキャラクターに至るまで、いちいち癖があって面白い。
いやまったく、さんざん笑わせていただいた。おすすめ。