アーサー・ミラー『セールスマンの死』
アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)
- 作者: アーサー・ミラー,倉橋健
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/09/20
- メディア: 文庫
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いったいいつになったら、大人になるんだい?(148ページ)
二部構成の戯曲。老セールスマンのウイリーは、いまや売上げも給与も落ち込み、家電製品のローンにも苦しめられている。かつて期待をかけた息子ビフも定職につかず、顔を合わすたびに対立するばかり。しばしば過去のよき思い出に耽り幻を見る彼だが、現実は悪くなる一方で……。
ウイリーのダメ男っぷりがなんとも滑稽で、とことんまで悲惨な話。筋の展開はいちいち鬼畜で、ウイリーのダメさはいちいちひきたつ。で、可笑しくなってくる。で、あんまり可笑しいんで泣きたくなってくるのである。
過去の栄光(それが現在の悲惨の原因になっているのだが)の記憶が、現在の状況と重なって展開される場面がしばしばあるのだが、その様子ときたら痛々しくて残酷でもう嘆息せずには見ていられない。
モダン・クラシックというに相応しい鮮烈な戯曲だった。来月刊行の『るつぼ』も楽しみ。