書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

紀繇『閲微草堂筆記 上』

中国怪異譚 閲微草堂筆記〈上〉 (平凡社ライブラリー)

中国怪異譚 閲微草堂筆記〈上〉 (平凡社ライブラリー)

 鬼(幽霊)や狐の話を中心とする掌編小説集。『聊斎志異』とならぶ清代の文語による短篇集の代表作。下巻は来月刊行予定、とりあえず上巻を読了したのでその感想を書いておく(下巻を読んでも同じ事しか書けない気がするが……)。

 『聊斎志異』は、短篇とはいえ、起承転結のきっちりした、いわゆる小説らしい体裁を備えた作品を多く収めるが、こちらの叙述はもっとずっと簡潔で、味付けらしい味付けもしてないものばかり。オチがつかないものも多く、分量も4ページをこえることはめったにない。
 むしろあまりの簡潔さが特徴というか、現代人ならふつう書かないような代物であるので、読んだことのない人は試し読みしてみる価値はある。途中で飽きる可能性もあるが……。作者も気晴らしのつもりで書いているのだろうし、こちらも暇つぶしとして読めばいいと思う。
 父親や叔父から聞いた話というのが多い。変な話ばかり子供に聞かせていると、その子供はこんな本を編むようなオカルト趣味人間になってしまうという教訓を、我々はこの本から得ることができる。また、同僚から聞いた話というのも多いが、清朝の役人は暇さえあればオカルト談義をしていたのだろうか。