ボート・シュトラウス『終合唱』
ドイツ現代劇23冊目。もうじき29巻・30巻が刊行されてシリーズ完結となるらしいので、どんどん読んでコンプリートを目指そう。
- 作者: ボートシュトラウス,Botho Strauss,初見基
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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鏡は黙ったままわけのわからない人間のことをしげしげと眺めている。(59ページ)
第一幕では、集合写真を撮影中の十五人の男女の会話が描かれ、第二幕では女性の裸体をうっかり見てしまった男の喜劇的な行動が女性との会話や社交界を舞台に描かれ、第三幕ではカフェを舞台に、亡夫を反ナチの英雄に仕立て上げようとする妻と娘のドタバタが描かれる。
喜劇・風刺的要素が強い。第一幕の脈絡ない会話、第二幕の主人公ローレンツの滑稽な言動、第三幕の母娘とほかの人たちとのやりとり、どれもエキセントリックで笑えるし、ただ奇矯なだけでなく示唆にも富んでいる。
難解なのはいつものこと。いや難解というより、つかみどころがない感じだったか。三幕劇でありながら、幕ごとに場所も人物も異なり、筋もつながらない(ただ、唐突に現れて「ドイッチュラント!」と呼ばわる男だけが共通して登場する)。劇全体の統一性をうまく見て取ることができなかった。そのせいか、前に読んだ同じ作者の『公園』と比べても、「読めた」という感じがさらにしない。個々の場面はそう難解でもなかったと思うのだが。