書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

小林めぐみ『片手間ヒロイズム』

片手間ヒロイズム (一迅社文庫 こ 1-1)

片手間ヒロイズム (一迅社文庫 こ 1-1)

「ところで大嶋先生、両生類以降って言いましたけど、魚は変態なんかしないんじゃないですか」
「甘いな、ウナギはレプトセファルスという幼体が変態したものだし、鯤は変態すると鵬になるし、鯉は龍になるじゃない。知らない?」(202ページ)

 「地球を救うため、インドで仲間を捜してきます」と言い残し、錫木千絵は夫と一歳の息子を置いて失踪してしまう。これを申し訳なく思った千絵の親戚たちは、知恵の従妹真理をベビーシッターとして派遣する。ところが真理の周囲ではおかしなことが起こり始める。

 小林めぐみライトノベル作家としてはキャリアが長いほうだそうだが、私は読むのは初めて。前作『食卓にビールを』がラノベサイト界隈で話題になっていたので気になっていたのだが、けっきょく読まずにおいてしまったので、新作が出たのを期に手を出してみることにした。
 けっこうディープなSFネタをもとに、けっこうとんでもない事件が次々起こるのだが、ヒロインの真理は終始それに淡々と対処していく。これに真理の緩い語り口とあいまって絶妙にシュールな雰囲気がかもしだされていて、なかなか楽しい。SFネタやその他の小ネタの取り上げ方に、これらに対する作者の愛が感じられるのも好印象。挿絵も作品にマッチしていてよい。
 というわけで楽しかった。続刊があるならそれも読んでみたい。