金庸『雪山飛狐』

- 作者: 金庸,岡崎由美,林久之
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2008/07/04
- メディア: 文庫
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貴様ら、喧嘩なら外でやれ。(331ページ)
天竜門の掌門・田帰農の不審な死に関わって、天竜門・飲馬川・平通{金票}曲の使い手たちが雪山で決闘をする。ところがその決闘の場に怪僧・宝樹が現れたことで状況は一変。決闘を生き残った十人の使い手は、宝樹に連れられて玉筆山荘を訪れる。そこで彼らは、「雪山飛狐」のこと、かつて李自成の護衛であった四人の男とその子孫たちの話、田帰農の死がそれに関わっていることを知る。やがて彼らは壮絶な暴露合戦を始める……。
文庫一冊という、金庸には珍しい分量の少なさもさることながら、内容的にも他の諸作品とは雰囲気が違っている。宝樹が語る李自成の護衛たちの因果と、使い手たちが明かしていく田帰農の死の謎解きが物語の大部分を占めている。金庸作品でお馴染みの男装少女や武術の奥義書などの要素は出てこない。またタイトルロールの「雪山飛孤」こと胡斐の出番も少ない。
宝樹が語る、数日間にもわたる胡一刀と苗人鳳の決闘場面は圧巻。あとは、最初から小者っぽい雰囲気を漂わせていた使い手たちが、話が進むにつれていよいよ本性を現してくるあたりも別の意味で圧巻。で、そのすぐ後で、まるで『笑傲江湖』の東方不敗か『連城訣』の血刀老祖みたいに、登場人物たちが恐るべき達人と噂していた胡斐がラブコメを始めたのには思わずにやけてしまった。
結末が放り投げということでも有名な作品だが、個人的に、この結末は制限時間つき選択肢を、時間内に選べなくてバッドエンドということではないかと思う。胡斐にこの選択ができるとは思えん。