書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

役に立つブックガイド

 清水義範の『世界文学必勝法』を本屋で立ち読みしたんですがね……。

世界文学必勝法

世界文学必勝法

 ブックガイドとしては、私にはほとんど役に立たない本だったな。いや、紹介文が下手とかそういうことではなくて、ここに紹介されてる50冊のうち、49冊が知ってる本だったから。
 知らなかった1冊は『バーブル・ナーマ』。高校時代の世界史の用語集に載ってたから、知らなかったというよりは忘れてた本だけど(ちなみにその『世界史B用語集』では「初代皇帝バーブルの回想録。トルコ散文学史上の傑作とされる」といたって簡潔に説明されている)。ほとんど役に立たない、と言ったのは、『バーブル・ナーマ』のことを思い出せたのだけは利得だったからで……ふうん、面白いのか。
 それ以外の部分では、有名でない作品を選ぶ冒険心が無さ過ぎると思う。現代の文学、健在の作家のものを選ぶ場合でも、すでに八十歳近く、名声・評価が確立しているような作品ばかりで……。


 やはりブックガイドは、知らない傑作をたくさん紹介してくれなければ。
 その点では、『世界文学必勝法』よりは、はっきりいって『世界史B用語集』のほうがずっと優秀だと思う。少なくとも、私の役には立ってきた(今の日本じゃほとんど読まれてないらしいストリンドベリとかも載ってるし)。
 そして、海外古典文学のガイドとして一番使えると思うのは、なにをおいても『岩波文庫解説総目録』だ。紹介されてる作品数がほかと違いすぎる。

岩波文庫解説総目録1927‐1996〈中〉 (岩波文庫)

岩波文庫解説総目録1927‐1996〈中〉 (岩波文庫)

80年版 岩波文庫解説総目録―1927~2006

80年版 岩波文庫解説総目録―1927~2006

 最新版は文庫になってないので買ってない。寝転がって適当に読めない点と、価格の点で困る。というわけで私が愛用してるのは上の97年版(ただ、この十年でもいい本はたくさん出ているので、出来れば最新版が欲しい……文庫化しないかなあ)。適当なページを開くだけで、未知の面白そうな本がぞろぞろ見つかる良書。そんじょそこらの「名作案内」よりはよっぽど使える。
 あとは同じ岩波のモーム『読書案内』。
読書案内―世界文学 (岩波文庫)

読書案内―世界文学 (岩波文庫)

 ベーシックな名作を薦めるという路線ながら、イギリス人のチョイスは日本人のそれとはやはり微妙に違っているので、知らなかった作品の紹介も意外と多かった(そういう意味では、外国の作家や学者の書いた文学案内が、もっと翻訳されるといいなとも思う)。


 海外の現代文学なら、『世界×現在×文学作家ファイル』一択。

世界×現在×文学―作家ファイル

世界×現在×文学―作家ファイル

 96年に出た本ながら、今なお現代文学のガイドとして新鮮さが薄れてないのは立派(というか、これ以上の本は出てないと思う)。04年にイェリネクがノーベル文学賞を受賞したとき、2chのノーベル文学賞スレなんかでは「誰だ?」というレスが飛び交ってたけど、この『作家ファイル』にはばっちり載っている。知名度より実力を、という編集方針の賜物だろう。