書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

スタニスワフ・レム『宇宙創世記ロボットの旅』

宇宙創世記ロボットの旅 (ハヤカワ文庫 SF 203)

宇宙創世記ロボットの旅 (ハヤカワ文庫 SF 203)

 星々が上下左右に整然と並んでいた、かつてのよき時代、トルルとクラパウチェスという二人のロボット宙道士が、宇宙のさまざまな場所で王侯や人々の悩みごとを解決したりしなかったりするという連作短篇集。

 『ソラリス』や『砂漠の惑星』、『大失敗』といった小説とはまたいっぷう変わった作風で、へえレムという人はこういうのも書くのか、と思った。えらくシュールでナンセンス、しかも諷刺の鋭いSFで、奇抜な警句が次々と飛び出す。駄洒落も満載。行動派で間抜けなトルルと、計算高く皮肉屋だけれどときどき間抜けなクラパウチェス、というコンビの性格は定番というか王道というか。
 宇宙のおとぎ話というと、カルヴィーノの『レ・コスミコミケ』を連想するけれど、『コスミコミケ』は奇想のほうが主眼だったのに対して、こちら『宇宙創世記ロボットの旅』は諷刺の要素が強い感じがする。『レ・コスミコミケ』は呆気にとられて笑ってしまうけれど、『宇宙創世記ロボットの旅』は何が可笑しいのかはっきりわかった上で笑ってしまう小説、といったところだろうか。
 レムに対してはお堅い作家というイメージを持っていたが、必ずしもそういう作品ばかりではないらしい。来月には『ピルクスの冒険』が復刊されるそうなのでそちらも楽しみに待ちたい。