書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

デーア・ローアー『タトゥー』

 ドイツ現代戯曲選、27冊目。終わりが見えてきた。

タトゥー (ドイツ現代戯曲選30)

タトゥー (ドイツ現代戯曲選30)

「思うんだけど
あなたって頭ん中がお花畑なんじゃない?
でもあたしにはお庭なんてないし
そこらじゅう地雷だらけ
一歩踏み出せば
吹っ飛ぶわよ」(71ページ)

 パン職人の父親とその妻、二人の娘からなる一見健全な一家は、姉娘が父親の近親相姦の犠牲になることによって、その秩序を保っているのだった。姉がその犠牲から逃れようとしたとき、家族のまとまりは崩壊していく。

 平俗で短い台詞をとんとんと連ねて一家の異常な状況を描き出す。一家団欒の場の(特に父親の)台詞まわしの白々しさといったら相当なもので、自己本位な父親の造型には感嘆さえする。
 なかなか迫力のある脚本だが、近親相姦もので障害児の出産が関わって結末に至るのは、正直なところお約束過ぎるかなと思う。