デーア・ローアー『タトゥー』
ドイツ現代戯曲選、27冊目。終わりが見えてきた。
- 作者: デーアローアー,Dea Loher,三輪玲子
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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「思うんだけど
あなたって頭ん中がお花畑なんじゃない?
でもあたしにはお庭なんてないし
そこらじゅう地雷だらけ
一歩踏み出せば
吹っ飛ぶわよ」(71ページ)
パン職人の父親とその妻、二人の娘からなる一見健全な一家は、姉娘が父親の近親相姦の犠牲になることによって、その秩序を保っているのだった。姉がその犠牲から逃れようとしたとき、家族のまとまりは崩壊していく。
平俗で短い台詞をとんとんと連ねて一家の異常な状況を描き出す。一家団欒の場の(特に父親の)台詞まわしの白々しさといったら相当なもので、自己本位な父親の造型には感嘆さえする。
なかなか迫力のある脚本だが、近親相姦もので障害児の出産が関わって結末に至るのは、正直なところお約束過ぎるかなと思う。