書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

『ペソア詩集』

ペソア詩集 (海外詩文庫)

ペソア詩集 (海外詩文庫)

だから わたしは書く
遠くにあるものに囲まれて
夢中になることもなく
存在しないものを生真面目に
感じている? 感じるのは読者の役割(12ページ)

 最近はあまり読んでないけれど、アントニオ・タブッキは好きな作家の一人だ。その好きな作家が好きな詩人ということで、フェルナンド・ペソアはずっと気になっていた。最近手ごろなサイズの翻訳が出たので、この機会に読んでみることにした。

 ペソアは多くの異名を用いて書いたポルトガルの詩人(この異名はペンネームということではなくて、ペソアが伝記を創造した人物)。この詩集にはペソア自身の名で書かれた作品のほか、アルベルト・カエイロ、リカルド・レイス、アルヴァロ・デ・カンポスの三人の異名詩人による作品が収められている。また、オクタビオ・パスとタブッキによるペソア論も収録されている。特にパスのペソア論は、この詩集を読むのにかなり助けになってくれた。
 一読しての印象は――特に奇抜な修辞やエキセントリックな表現を用いる詩人ではないのだな、と。むしろ、夢とか魂といったような言葉を頻繁に使うので、軽く見えてしまったほど。しかし異名者とペソアの、また異名者同士の微妙な関係、詩風の違いを意識しながら読むと、面白いところがいろいろありそう。またいずれ読み返しておきたい。