書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

アンドルー・クルミー『ミスター・ミー』

ミスター・ミー (海外文学セレクション)

ミスター・ミー (海外文学セレクション)

 18世紀フランスのロジエなる人物の著書『百科全書』について調べるため、ミー氏は八十歳にしてパソコンを入手し、ネットの海を探るうち、『フェランとミナール』なる書物を読む女性の裸体ビデオのサイトに行き着くという第一の話と、18世紀フランスを舞台に謎の原稿を入手したフェランとミナールの冒険とルソーとの邂逅を描く第二の話、ルソーの『告白』中に一場面だけ登場するフェランとミナールなる人物について研究している仏文学者の、教え子への恋着を描く第三の話と、三つの話が入れ替わりに進んでいくうちに、やがて各話の関連が見えてくる。

 全体的にボケ&突っ込み(主に読者が担当)のコメディ調。第一の話では浮世離れしすぎたミー氏が、第二の話ではおつむの足りないミナールが、話が展開するたび延々とボケ続ける。第一の話のヒロインのカトリアナなんかは順応力がありすぎるし、第二の話の相棒フェランは気を使いすぎていて、いずれも突っ込み担当としてはいまいち頼りにならないので、代わりに読者が突っ込むことになる。で第三の話だが、これがいちばん滑稽な話で、第一の話とのリンクが明確になる第十三章を読んだら、笑いを通り越して呆れてしまう次第。
 三つにもわたる物語の世界をさんざん引き回されて、オチが釣りでしただったと来た日には……なんかもう笑うしかない。
 楽しい本でした。