書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ニール・サイモン『おかしな二人』

ニール・サイモン〈1〉おかしな二人 (ハヤカワ演劇文庫)

ニール・サイモン〈1〉おかしな二人 (ハヤカワ演劇文庫)

今のおれたちのやり方はどうも間違っているんだ、そうなんだ。二人のひとりもんの男が八つも部屋のある大きなアパートに住んでるのに、そのアパートがおれのおふくろの家よりきれいになるってのが土台おかしいよ。(93ページ)

 ずぼらな性格で妻と離婚したオスカーと、神経質すぎる性格がもとで妻と離婚手続き中のフィリックス、二人の中年男が同居生活を始める。ところがやがて、当然の成り行きとして、互いの気質が癇に触り出す。

 ジャンルとしては性格喜劇かな。風俗劇としての一面もあることはあるが、やはり二人の主人公と、彼らを取り巻く悪友たちの会話が読ませ所だろう。漫画チックなドタバタから、当人同士は真剣なのに傍から見るとやたら滑稽なやりとり、それからほんの少しお涙頂戴。たとえばフィリックスが初登場したとき、彼が自殺するのではないかと恐れてその一挙一投足に大騒ぎするオスカーと仲間たちの様子とか、女性を相手にした途端縮み上がって、さっきまで喧嘩していたオスカーに助けを求めるフィリックスの様子なんかはなかなかおかしい。
 抱腹絶倒? うーむ。世間の評判ではそうらしいけれど、私はそこまで笑えたわけではないかなあ。確かにあちこちでにやけさせてはもらったけれど、ひっくり返るほど笑えたところはなかった。どちらかと言えば、シェイクスピアの喜劇の出来のいいやつ、たとえば『から騒ぎ』あたりのほうが笑えると思うのだが。