ジョージ・バーナード・ショー『聖女ジョウン』
調子が悪いときは戯曲に限るぜ。
- 作者: 鳴海四郎
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1966
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お前が聞いたという声は、すべてお前自身の勝手気ままな心のこだまにすぎぬ。(490ページ)
ジャンヌ・ダルクものの歴史劇。シラー『オルレアンの少女』、アヌイ『ひばり』、シェイクスピア『ヘンリー六世(第一部)』に続いて、これでジャンヌ・ダルクものを読むのは四作目になる。
面白いのかといえば、まあ面白いのだけれども、ジャンヌ以降の歴史、政治史をにらんで書いているという印象が強く、やや硬い、というか頭でっかちな感じがした。そういう点で、文学作品=娯楽作品としては、『ヘンリー六世』『ひばり』には一歩譲るかと思う。『ヘンリー六世』にはスピーディな展開と、魔女としてのジャンヌの人物造型という珍しさがあったし(でも『ヘンリー六世』のジャンヌはラストシーン以外はあれはあれで颯爽としてかっこいい。「優柔不断ね、ぐずぐず言って。息の続く限り戦いなさい、私がついてるわ」)、『ひばり』には大胆な構成という特長があった。それらと比べると、退屈なところがないわけではない。
しかしエピローグの部分の意地の悪い展開はきわめて秀逸で、乾いた笑いを提供してくれる。