書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

アガサ・クリスティー『蜘蛛の巣』

 また蜘蛛ネタか。

蜘蛛の巣 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

蜘蛛の巣 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 サスペンス劇。ヒロインのクラリサは、外務省の役人である夫ヘンリーと、継娘のピパとともにケント州の家で平穏に暮らしている。しかしこの一家には、ヘンリーの前妻ミランダが麻薬中毒になってピパを虐待した挙句、売人のオリバーと駆け落ちしたという暗い過去があった。ある日クラリサは、唐突に訪ねてきたオリバーと、ピパの親権をめぐって口論になる。それからしばらくして、オリバーの死体がヘンリーたちの屋敷で発見される。

 筋運びが軽快かつ緻密。緊張感を保ちつつさくさく読めるし、伏線の張り方も巧みである。キャラクターの書き分けもきっちりされているし、台詞の応酬もなかなか良い感じで、推理のみならず心理劇としても読みごたえがあると思う。終盤にはどんでん返しも用意されている。
 くどさや陰惨さ、垢抜けない感じもしない、さすがは女王というべき秀作。最近の絶不調の私にもすいすい読ませてくれた。