書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

崔象川『白圭志』

 江西の張博は巨万の富を持ちながら、仁義に厚く財を軽んじることで名声高かった。ある日、張博の財に目がくらんだ親戚の張宏は、密かに張博を毒殺し、張博の遺児の面倒を見るとて張博の財産を管理するようになる。時がたって、張博の遺児張庭端とその妹張蘭英、張宏の息子の張美玉は、それぞれ文才・美貌を兼ね備えた青年に成長するのだった。張庭端はある夜、才女楊菊英と密かに詩を交わして恋仲になり、また張美玉も、劉秀英という少女と似たような経緯で言い交わす。しかし二組の才子佳人には異なる結末が待っているのだった。

 読んでいてついつい突っ込んでしまったのは、名前と出身地しかわからないこの作者さん、ずいぶん男装少女が好きだなァということ。ヒロインとかそういうキャラだけではなく、名前のある若い女性キャラは全員に男装シーンがある。
 全十六回で、分量は120ページほど。そのわりにプロットはなかなか入り組んでいて、うまくいかない展開の連続がもどかしくもなかなか面白い。ただ重要なキャラクター、具体的には張宏と張美玉だが、この二人の死に方があんまりにもあっけなさ過ぎるところがうまくない。特に張美玉に対する作者の扱いがいまいち公平でなくて、ピカレスクのように悪の限りを尽くすでもなく、親と対照的な才子として生きるでもなく、半端なキャラのままあっさり殺してしまったのは拙いなと。このキャラの描き方によっては、この作品は一級の小説になったように思えるのだが。