書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ウィリアム・シェイクスピア『ペリクリーズ』

 ツロの領主ペリクリーズは、アンタイオカスの王女がその父と近親相姦の罪を犯していることを知り、刺客を恐れてタルソ、次いでペンタポリスに逃れ、ペンタポリスの王女セーザと結婚する。アンタイオカスの死を知りツロへの帰還を目指すペリクリーズだが、途上セーザが出産の苦しみに死んでしまう。セーザの娘マリーナはタルソのクーリオン、ダイオナイザ夫妻のもとに預けられるが、美しく成長したマリーナを嫉むダイオナイザにより殺されかかった後、海賊にさらわれミティリーニの淫売宿に売り払われてしまう。

 『冬物語』や『テンペスト』とともにシェイクスピア後期の「ロマンス劇」に分類される作品。悲劇的で入り組んだプロット、大団円の結末が特徴である。この作品でも、死んだと思われたセーザやマリーナと、ペリクリーズとの再会という円満な結末でもって幕が引かれる。
 ポンポンとテンポよく話が展開していくので読むのが苦痛ということはないが、しかしこれはダメだと思う。あんまりにもご都合主義で、勧善懲悪な筋書き。キャラ立ても目新しさがなくて萌えどころがない。売春宿を訪れたミティリーニの領主を、マリーナが説得して改心させるところなんてのは噴飯もの。これまで読んだシェイクスピアの作品のなかで、ここまではっきりダメだと思えるものは初めてだ。
 ……と思うのだが、執筆当時も今も、上演されると評判が良いらしい。1608年の初演のときも大当たりをとったようだし、近くは2003年の日本でも公演があったがネット検索してみると好意的な劇評ばかりである。海上での嵐の場面など華やかな場面が多くて舞台でこそ映えるということだろうか。