書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

スティーヴン・エリクスン『碧空の城砦 1』

碧空の城砦1 (マラザン斃れし者の書)

碧空の城砦1 (マラザン斃れし者の書)

 ハイ・ファンタジーの戦争もの。マラザン帝国の漁村で住民と訓練中通りかかった兵士らが虐殺される事件が起きる。何者かに連れ去られ、事件の唯一の生き残りとなった少女ソリーは、のちに暗殺者として帝国軍に加わる。一方事件の対処を認められ女帝つき女官ローンの副官に抜擢された若き軍人パランは、ソリーとその背後の者たちの動きを封じるため、ソリーの所属するブリッジバーナー隊の指揮官として赴任させられる。ときに帝国軍は、強引な作戦で甚大な被害を出しつつ自由都市ペールを攻略し、さらなる大都市ダルジスタンに迫りつつあった。

 作者の名前がスティーヴ・エリクソンと似ているから、といういい加減な理由と、「氷と炎の歌に比肩する傑作大河ファンタジイ」という帯の煽りに煽られて(しかし「氷と炎の歌」の第三部と第四部はいつ文庫化するんだろうね)、買ってみたわけだが、あちらは超常的な存在を背景におしこめ人間同士の葛藤を主に描いているのに対し、こちらはファンタジー要素をずっと前面に出してきている印象。大陸の辺境には非人類の異種族が跋扈しているし、戦争場面では両サイドから魔法がばんばん飛ぶ。
 世界観の説明は特にされない上、視点となる登場人物がころころ変わり、またその内面も深く語られない場合も多いため(パランとタターセイルは別だが)、読むのにちょっと骨が折れる。ただ話の落としどころが予想がつかないし、このあと物語が大きく展開しそうな雰囲気もあるので、第二巻以降に期待して待ちたい。