書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

谷川流『学校を出よう!』1〜6

 『涼宮ハルヒの驚愕』の発売は延期されるし、『ボクのセカイをまもるヒト』の続刊もなかなか出ないので、谷川流成分を補給するために未読シリーズのこれを読んでみた。

学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)

学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)

学校を出よう!〈2〉I‐My‐Me (電撃文庫)

学校を出よう!〈2〉I‐My‐Me (電撃文庫)

 EMPと呼ばれる超能力を持つ少年少女たちだけを集めた学園が舞台のSFシリーズ。白衣のトリックスター宮野とツンデレゴシック茉衣子のコンビ、生徒会書記にして強力なテレパスの真琴、学園唯一の無能力者・佳由起とその双子の妹春菜・若菜らが学園の内外で起こる怪事件に巻き込まれていく。1巻は幽霊、2巻は時間、3巻は分身、4巻は平行世界、5、6巻は吸血鬼と、使い古された題材を扱いながら独自の味付けを加えている。

 谷川流のファンの間では『涼宮ハルヒ』シリーズと同等以上の評価を得ているシリーズだということだが、実際に読んでみて納得した。むしろハルヒより面白いんじゃないか。というか、谷川流ってこんなに面白い話が書ける人だったのか?
 ――いや、『ハルヒ』や『ボクセカ』がつまらないというわけじゃない。ただ、谷川流という作家は「ゆるい語りとキャラ萌えと若干のSF成分・メタ成分で読ませる人」換言すれば「気楽に読める作家」というイメージだったのだが、このシリーズは読んでいてつい肩に力が入る個所が多かった(まあ1巻や3巻なんかはけっこうドタバタコメディしてるのだが)。巻が進むにつれて作品世界がどんどん膨らんでいくところもよい(まったく、1巻と5、6巻を比べると、よくもここまで進化したものだと感心する)。SF趣味やメタフィクション志向は谷川作品の特徴だが、このシリーズではほかのシリーズに比べて随分強いし、物語への織り込み方もうまい。その点でも面白かった。そのほか、各巻いずれも印象深い終わり方をするところ、茉衣子の心情がだんだん変化していくところ、伏線回収の見事さ等々、見所はたくさん。
 個人的にお気に入りのキャラクターは2巻から登場する<インターセプタ>。彼女と宮野が対峙する6巻ラストは非常に爽快だ。
 さて、これで私も『学校』7巻まだ? と箸で茶碗を鳴らす一派に仲間入りだ。もちろん『涼宮ハルヒの驚愕』も心待ちにしているし、『ボクのセカイをまもるヒト』の3巻にも期待している(軽すぎるためか評判のよくない『ボクセカ』だが、『学校』が巻を追うごとに進化していったように、こちらのシリーズもいずれ大きく盛り上がるだろうと思っている)。どのシリーズでもいいから、早く続刊出ないかな。