書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ウィリアム・シェイクスピア『恋の骨折り損』

さんざんおもちゃにしてやりますわ、切り札はこっちのもの、
あの人は私の道化役で、私はあの人の運命の女神ですもの。(123ページ)

 ナヴァール王とその三人の臣下は、学問に精進するため、三年にわたり美食と色恋を絶つことを誓う。そこへ領土問題を協議するため、フランス王女が三人の貴婦人を連れて訪ねてくる。王と三人の臣下は、それぞれに王女と三人の貴婦人にほれ込むが……。

 これはちょっとした異色作。キャラクター性の強さやプロットの巧みさの点では、シェイクスピアの作品の中でもかなり下のほうに位置する。この作品の魅力はなんといっても言葉に尽きる。独白といい対話といい、駄洒落を並べたと思えば美辞麗句が連なり、衒学趣味に走るかと思えば滑稽な間違いを繰り返す。自分に酔ったセリフを吐くキャラがいれば、他の誰かが容赦なく冷やかしや突っ込みを入れる。ちょっと行き過ぎている個所というか、寒くなってしまうところもないことはないが、これほど掛け合いの面白さ「だけ」を追求した作品も少ないことだから、シェイクスピアの言葉の使い方なんかに興味がある人は、ぜひとも読んでおくべきだと思う。