書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

田辺力『多足類読本』

 ようこそ、迷走中管理人のブログへ。
 このトビズムカデはサービスだから、まず噛まれて落ち着いて欲しい。
 うん、「また」なんだ。済まない。
 仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
 でも、某ペットショップのサイトで手のひらサイズのオオゲジの写真を見たとき、僕は、ちょっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてしまったんだと思う。
 殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないでいたい、そう思ってこのエントリーを書いたんだ。
 じゃあ、感想を聞いてもらおうか。

多足類読本―ムカデやヤスデの生物学

多足類読本―ムカデやヤスデの生物学

多足類は極上の造形物である。(7ページ)

 タイトル通り多足類の本。もちろん中心はゲジを含むムカデ、およびヤスデである。このあいだ紹介した『毒虫の飼育・繁殖マニュアル』が飼育関連のことをメインに扱っているのに比べ、本書は飼育方法はもちろん、分類や生態、種類の見分け方、採集方法から標本の作り方まで、多足類にまつわる全般のことについて基本的な知識を紹介している。
 得られる知識の豊富さはもとより、著者の多足類への愛情がひしひし感じられて、読んでいて楽しい本である。生物学とは関係ないような音楽や本などを引用しつつムカデ・ヤスデの魅力を語るくだりはにやにやせずには読めない。もちろん、ちょっと学術的な方向にも踏み込むが、そこらの虫好き程度の知識があれば内容にはついていける。
 まああれだ、グロテスクなものというのは、美の対極にあるように見えて、実は美に一番近いところにいるんだろうな。「キモい」の一言で片付けてその美を見失うのは勿体無いと思うわけだ。というわけで、手っ取り早くて危険のないヤスデ観察は、前も書いたけれど、いち虫好きとしてぜひお薦めしたい。
 あとはゲジだが……私の前には未だ出現したことがない(ムカデはたまに見るんだが)。そうとうコミカルな動きをするらしいので、一度はお目にかかってみたいものだ。冬に洞窟で越冬中のやつを採集に行くといいらしいが、洞窟なんてこの辺りにはないからなあ。