ギー・ド・モーパッサン『口髭・宝石 他五編』
- 作者: モーパッサン,木村庄三郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1954/11/05
- メディア: 文庫
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七本とも男と女の話。あっさり味でさっくり読めるが、分量も少なければ際立った特色もないのでいまひとつ物足りない。ビスケットを一枚だけ食べたようなもので、別にまずくもないが特別にうまくもなく、たいがい予想できる味しかしない上に、腹も膨らまない。
巻頭に置かれている「告白」なんか特にそうで、そこそこ金のある農家の娘が、馬車の御者と、馬車代をただにするのと引き換えに性交し、妊娠したことを母親に告げるという話だが、母親の反応がテンプレートすぎてがっかりする。現代の読者が読むには、ちょっと。
そんな中でもわりと良かったのは「口髭」、これは女性が手紙の中でひたすら口髭に対するフェティシズムを語り続ける作品で、片足を変態サイドに突っ込んでいてよろしい。また「藁椅子なおしの女」のヒロインの子供っぽい恋情はなかなか切なくて、その相手の薬剤師の反応とかはテンプレどおりではあるんだが、わりと萌えられる。