マルセル・ブリヨン『砂の都』
前のアレナスとかグゴーとかに比べるとずっと地味。しかしそれもまた味わいってもんだ。地味といっても内容が薄いわけじゃないしね。
- 作者: マルセルブリヨン,Marcel Brion,村上光彦
- 出版社/メーカー: 未知谷
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 単行本
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ペルシャ人商人、講釈師、金細工師とその娘(のちに語り手の妻になる)など、登場人物や道具は『千一夜物語』ふうのエキゾチックな雰囲気を漂わせているが、劇的な展開は少なく、物語としてはかなり地味である。ただ、個々の場面――たとえば、ペルシャ人商人の店で語り手が絨緞に見入る場面とか、金細工師の店で宝石を選ぶ段とか、水売りとともに体験した都市の末路を語るくだりとか――は、美しく印象的。全体的に、タハール・ベン・ジェルーンの作品にちょっと似た感触があって、エキゾチックでありながら同時にノスタルジックでもある。