書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

マルセル・ブリヨン『砂の都』

 前のアレナスとかグゴーとかに比べるとずっと地味。しかしそれもまた味わいってもんだ。地味といっても内容が薄いわけじゃないしね。

砂の都

砂の都

 幻想小説マニ教の遺跡を探索するため中央アジアの砂漠を訪れた語り手は、嵐を避けて遺跡の中で数日を過ごしたのち、砂の下に埋もれていた都市の姿を見つける。中世シルクロードふうのその都市で、語り手はペルシャ人商人や講釈師らとともに数年を過ごし、彼らからさまざまな叡智を授けられるが、のちに都市は砂によって埋没する――。

 ペルシャ人商人、講釈師、金細工師とその娘(のちに語り手の妻になる)など、登場人物や道具は『千一夜物語』ふうのエキゾチックな雰囲気を漂わせているが、劇的な展開は少なく、物語としてはかなり地味である。ただ、個々の場面――たとえば、ペルシャ人商人の店で語り手が絨緞に見入る場面とか、金細工師の店で宝石を選ぶ段とか、水売りとともに体験した都市の末路を語るくだりとか――は、美しく印象的。全体的に、タハール・ベン・ジェルーンの作品にちょっと似た感触があって、エキゾチックでありながら同時にノスタルジックでもある。