書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ミシェル・ジュリ『不安定な時間』

 面白いけど、乗っていけなかった部分もあり。やはり眠くて頭が回らないときに幻想小説系のものなど読むものではないなあ。
 で、ネット書評などを見ると同じ作家の『熱い太陽、深海魚』はさらに評価が高いようだ。いつかは手にしてみたいもの。
 あと、amazonには画像がないけど、この本のカバーデザインはかなり秀逸。

不安定な時間 (1980年) (サンリオSF文庫)

不安定な時間 (1980年) (サンリオSF文庫)

こんな目にあうのはもうお断りだな。(52ページ)

 ガリシャンカール病院の時間潜行士ロベールは、1966年の調査のため、時間溶解剤を飲んで溶時界へ赴き、ダニエルという男に乗り移る。ダニエルはさまざまな異様な場面を経験し、またガリシャンカール病院とHKH工業帝国の干渉に悩まされるが、やがて自分の立ち位置を確認していく。

 ロベールが時間潜行を始める怪しげな場面から物語が始まるが、話の中心となるのは彼に憑依されるダニエル・ディエルサンのほうである。そしてその話はいかなる内容かと見ると、断片的な場面の繰り返しが続く上、ダニエル自身、自分がどういう状況に陥っているのかわかっていないため、読者のこちらも内容をつかむのに苦労することしきり。要するにドラッグ小説なのだから、前後のつながりを考えながら読むより個々の場面を楽しむのが良いか……と思いきや、存外あちこちに伏線が張り巡らされているらしくもある。
 そんなわけで、半分くらいは読むペースがつかめずに苦労したものの、後半部分になって頭が慣れてくるとだんだん面白くなってきた。溶解する現実に増殖する幻想、謎の組織同士の駆け引き、めくるめくばかりの場面の転換にパロディ的な要素も加わっていて、考えてみれば幻想小説のおもしろさは目一杯つめこまれているようでもある。前半部分にはしっかり読めていない部分もあるので、いずれ再読を期したいところ。