アルトゥール・シュニッツラー『輪舞』
戯曲祭り二日目〜。
- 作者: シュニッツラー,中村政雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1987/07
- メディア: 文庫
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「でも、女房のある男を誘惑して不実を働かせても、君は格別なんとも思いやしないだろう?」
「まあ、何をおっしゃるの。あんたの奥さんだって、きっとあんたと同じことをやってるわ」
「おい、君、そんなことを言うのはおことわりするぜ。そんな言い草は」(78ページ)
戯曲。「夜の女」と「兵士」、「兵士」と「小間使い」、「小間使い」と「若だんな」、「若だんな」と「若奥さま」、「若奥さま」と「夫」、「夫」と「おぼこ娘」、「おぼこ娘」と「詩人」、「詩人」と「女優」、「女優」と「伯爵」、「伯爵」と「夜の女」とこう、一人ずつ交代しながら10組のカップルを登場させ、性交前後の掛け合いを軽快に描く。
同じ作者の小説『みれん』はいまひとつ楽しく読めなかったが、こちらもなんだか乗っていけなかった。きわどい場面の前後を描きながら、場面を淫猥におとさず軽妙軽快にさばいているところが売りなのだろうが、軽すぎてパンチが足りない。「人間はいかに他人のことを知らないか」ということを描いてみても、そんなことは自明のことだし、ウィーンの風紀の退廃にしても、現代人から見ればなんてことないのでは。
終わり近くまで読んだら、なぜ私がこの作品を物足りなく感じたかわかった。似たような主題・構成を持ちつつ、もっと複雑でもっと軽快でもっと現代的な作品をもう読んだからだ。これだ。
- 作者: ローラントシンメルプフェニヒ,Roland Schimmelpfennig,大塚直
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 単行本
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