書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

カルロ・ゴルドーニ『抜目のない未亡人』

 戯曲祭り、休みを挟んで五日目。今日もあまりたくさん読めなかったけど、どうにかゴルドーニ一冊は読み終わったのでここに紹介。

抜目のない未亡人 (岩波文庫)

抜目のない未亡人 (岩波文庫)

婿選びの際には心で決めるのでなく、頭で決めることにいたしましょう。(103ページ)

 ヴェネチアの裕福な商人の未亡人で、まだ若く美しいロザーウラ。彼女に恋着するのはイギリス人ルネビーフ閣下、フランス人ムシュー・ル・ブロー、スペイン人ドン・アルバロ、イタリア人ポスコ・ネーロ伯爵の四人。新しい婿を選ぶため、ロザーウラは一計を案じるのだが……。

 18世紀半ばに書かれた古典劇だが、この岩波文庫版には注釈がいっさいついていないことからも知れるように、難しいことを考えなくても気軽に楽しめる喜劇である。まず面白いのは、国民性をネタにした冗談というのは、二世紀以上も昔から行われていたのだ、というところ。イギリス、フランス、スペイン、イタリアと、四カ国出身の四人の男主人公の、四者四様の性格対比が笑える。
 また、こうした恋愛劇では取り持ち役の下男や侍女が活躍するものが多いが、この作品でもアルレッキーノ、マリオネットの二人がコミカルな言動で読者を楽しませてくれる。また女主人公たるロザーウラと男たちの洒脱なやりとりもよい。
 大傑作というような類の本ではないが、肩の力を抜いて読める佳作。