書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ウィリアム・シェイクスピア『リチャード二世』

 戯曲祭り、一週間目。さて、いつまで続けたものだろう?

この王冠は喜んで譲るが、この悲しみはまだ私のものだ。
私の栄誉、私の権力はあんたの自由になっても、
私の悲しみはそうはいかぬ、私はまだ私の悲しみの王だ。(150ページ)

 歴史劇。イギリス国王リチャード二世は、アイルランドの叛乱を鎮圧するための軍資金を賄うため、死んだ叔父ゴーントの財産を没収する。ゴーントの息子で追放の身にあったヘンリー・ボリングブルックは、これを聞いてイングランドに馳せかえり、謀反を起こす。リチャードにつく味方は少なく、リチャードはろくに抗戦せぬままヘンリーに王冠を譲り渡す。

 百年戦争薔薇戦争を扱ったシェイクスピアの史劇のうち、もっとも古い時代を舞台にした作品。このあと『ヘンリー四世』二部作、『ヘンリー五世』、『ヘンリー六世』三部作、『リチャード三世』へと続く。
 全体的に悲劇性の高い作品で、性格の弱さゆえに次々味方を失っていくリチャードの様子は哀れを誘う。とりわけ第四幕の王冠譲渡の場面の、リチャードの叫びの悲痛さは心を揺する。そのほか、忠義をふりかざすヨーク公がさっさとヘンリーに寝返り、ほかの人物たちから佞臣呼ばわりされているブッシーたちが従容として死に赴くあたりの場面も、さらっと書いてあるわりになかなか印象的だ。
 太子ハルと取り巻きのごろつきどもが活躍する『ヘンリー四世』や、主人公が強烈な悪の光を放つ『リチャード三世』に比べると、いくらか地味な感じがあるのは仕方のないところか。

 ネットでこの戯曲のことを調べていたら、前に紹介したドイツの現代作家ブラッシュによる翻案があるということを知った。そちらの脚本もちょっと読んでみたいところ(ブラッシュによる翻案の詳しい内容はここを参照)。