私家版世界十大小説
「あわせて読みたい」からid:natume_yoさんの「世界の果てのクロエの祈り」に飛んでみると、世界十大小説に関するエントリが書かれていた。見ると(これまたあわせて読みたいでお馴染みの)id:ryotoさんが20日に世界十大小説についてエントリを書いてから、はてなダイアリー界隈で十大小説を選ぶのがちょっと流行しているらしい。ならば私も便乗してみよう。
すでにモームの十大小説、篠田一士による20世紀十大小説の著作があり、また多くの方が古典中心に十大小説を選んでいるから、出遅れた私は敢えて古典は別にし、戦後に発表された作品に対象を絞って独自性を出してみようと思う。
ジュリアン・グラック『シルトの岸辺』(フランス)
レイナルド・アレナス『夜明け前のセレスティーノ』(キューバ)
ダニロ・キシュ『砂時計』(セルビア)
ミロラド・パヴィチ『ハザール事典』(セルビア)
アナトーリイ・キム『リス』(ロシア)
李文烈『皇帝のために』(韓国)
スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』(アメリカ)
ウンベルト・エーコ『前日島』(イタリア)
古橋秀之『ブライトライツ・ホーリーランド』(日本)
莫言『白檀の刑』(中国)
制作年代順に並べてある(はず。同年発表のものは、発行月までは調べてない)。知名度、世間での評価、バランス感覚は排除して好きな作家ばかり選んでみた(とはいえこれらの作品が古典の傑作たちと肩を並べられるほど優れていることは確信している)。ドイツ文学がないのは、ドイツの現代小説を読んでないから。ファスビンダーの戯曲『ゴミ、都市そして死』を入れようかと思ったけど結局とりやめ。悩んだのはロシア文学で、ソローキンか、ペレーヴィンか、と決めかねたけど、複雑な構成と楽しい奇想に満ちていながら、充分に評価されてない感じがするのでアナトーリイ・キムを選ぶことにした。『皇帝のために』『砂時計』も大傑作だと思うけど、本当に読まれてなくて残念だ。日本文学にラノベ作家の古橋を入れたのは、もちろん挑発的なものにしようという意図もあるわけだけど、作品の持つ奇想や風刺、スケールの大きさが高い評価に値すると考えているためでもある。これを読んで私はライトノベルの可能性を信じるに至った。
この十選からは漏れたけど、選ぶ可能性のあった作家としては、ラファティ、チュツオーラ、ペレーヴィン、エリアーデ、カルヴィーノ、タブッキ、ジャネット・ウィンターソン、パムク、大江健三郎の名前を挙げておく。
古典については、なんで誰もこの作品を挙げないんだ、と思うものを以下に並べる。
羅貫中『三国志演義』
施耐庵『水滸伝』
セルバンテス『ペルシーレスとシヒスムンダの苦難』
ホフマン『悪魔の霊酒』
ユゴー『ノートルダム・ド・パリ』
ゴンチャロフ『オブローモフ』
ゾラ『ジェルミナール』
アナトール・フランス『シルヴェストル・ボナールの罪』
ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』
エレンブルグ『トラストDE』
っと、適当に選んでいたら十作になったな。じゃあこれが私の世界十大古典小説ってことで。
この中でもホフマン、ゴンチャロフ、ゾラ、ブルガーコフが選ばれないのがファンとしては不満なところ。セルバンテスは『ドン・キホーテ』、ユゴーは『レ・ミゼラブル』があるから『ペルシーレス』『ノートルダム』が挙がらないのは仕方ないかなという感じだが。このほかにも、ラブレーやジャン・パウル、ネルヴァル、チャペックの名前が挙がらないのは不思議だ。
はてなダイアリー住民の皆さんの「私家版十大小説」を見て回るには、id:idiotapeさんの記事にリンク集があって便利。