ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』
お話して、ジャネット。……って感じかね。
- 作者: ジャネットウィンターソン,Jeanette Winterson,岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2007/11/01
- メディア: 単行本
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でも、それってあたしの人生の物語なの?
お前さんが語りさえすればな。(119ページ)
スコットランドの崖の上で育った父親のいない少女シルバーは、やがて母親も失って、灯台守の老人ピューに引き取られる。ピューは夜ごと、百年前に生きた牧師ダークの物語をシルバーに語り聞かせる。やがて灯台は無人化が決定され、ピューとシルバーは離別することになるのだが……。
奔放な想像力が炸裂した傑作『さくらんぼの性は』に比べると、作風が随分おとなしくなったな、と思う。思わずはっとする場面や息をのむ描写もたくさんあるが、『さくらんぼの性は』の犬女のような派手な人物は登場せず、構成も、時系列は多少ばらつくが、シルバーの話とダークの話が交互に語られるだけ、と比較的シンプルである。文体は、ちょっとセンチメンタル過ぎるきらいもあるのだが、意外な言葉を組み合わせていたりして、なかなか詩的で面白い。他に注意を引かれた点として、物語と人生に対するメタ的な視線がある。登場人物の中で魅力的なのはピューだろうか。老人と孤児、という組み合わせは、古典的ではあるが、やはり絵になる。
あんまり褒めてないようだが、一気に読み通せたのは、やはりウィンターソンの物語を語る力が本物だからだろう。だからおすすめである。『パワー・ブック』も読まねば。