冲方丁『スプライトシュピーゲル 3』
スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)
- 作者: 冲方丁,はいむらきよたか
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2007/11/01
- メディア: 文庫
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かくして君は親友という名の共犯者となり、僕の命令に従わざるを得ないのだ。(70ページ)
本来の手足の代わりに機械化された義肢を身につけて、MSS(公安組織)の尖兵として治安維持のために働く少女・鳳たちの戦いを描いたアクション小説の第三段。シリーズ三冊目の本書は、MSS長官ヘルガの暗殺未遂に始まる24時間の攻防を話の軸にしている。
例の文体をうまく使って話にスピード感を出している上に、緊張の続く展開を用意し、その中に適度にコメディ要素を取り混ぜ、さらに各キャラクターの感情を熱く描きだしているから、当然、面白くないわけがない。今回特に株を上げたのは水無月かな。少女が前線でどんぱちやって、少年は後方でサポートにまわるというのは、最近のライトノベルらしくはあるが、サポートする側も死に物狂いであるところを見せてくれたのは良かった。それと妙に気に入ったのはイグナツ氏で。ほとんどの登場人物がヒーローか、悪のヒーローか、もしくは嫌な奴という小説の中で、こういう平凡なおじさんはなかなか希少だ。
けっこう吃驚する結末が用意されていて、第四巻以降どのように話が展開していくかひじょうに楽しみだ。