書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

ウィリアム・シェイクスピア『ヴェローナの二紳士』

おれがおれ自身にたいして忠実であるためには、
ヴァレンタインにたいして裏切りをせねばならぬ。(67ページ)

 ヴェローナの紳士ヴァレンタインとプローテュースは親友の間柄。プローテュースはヴェローナの少女ジュリアに恋し、ヴァレンタインはミラノへ赴き、ミラノ大公の娘シルヴィアを愛する。のちプローテュースも父の意向に従ってミラノへやってくるが、彼はシルヴィアに一目惚れし、ジュリアへの愛情とヴァレンタインとの友情を裏切ることになる。

 いちおう喜劇ということになっているらしいが、裏切りや謀略などの陰気な場面が多く、悲劇的な側面もかなり強い。というか、これは悲劇にしてしまったほうがまだしもすっきりまとまった良い作品になったと思う。例えば、プローテュースがヴァレンタインを殺し、ジュリアがプローテュースを殺して自殺する、というような(メロドラマ的ではあるが……)。実際、策謀家で裏切り者たるプローテュースのキャラクターは悲劇の中でこそ映えそうなものに見える。個人的には悲喜劇も混乱した構成も嫌いではないけれど、結末近くが不自然で無理矢理な展開だらけになってしまっているのはいただけない。不出来な作品といわざるをえない。