書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

秋山瑞人『DRAGONBUSTER 01』

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

胸の中に剣があるのだ。それがどんなに苦しいか。(257ページ)

 中華風の架空世界を舞台にした「龍盤七朝」シリーズ第一巻。卯王朝の第十八皇女月華は、ある晩、川辺で剣舞する青年・涼孤を見かける。屋敷に帰った月華は、自分も剣を習うと言い出すのだが――。

 月華のお付き・郡狗老人の回想から話が始まるのだが、この回想部分の文章・文体はえらく気合いが入っている。金庸でなく古龍でなく、剣戟描写に独自の風格があって、実に読みがいがあった。本編のほうでも文体は冴える。
 その本編には本格的な剣闘シーンが一箇所もないのだが、それでもしっかり「剣をめぐる物語」になっている。これにはまったく感嘆。その他、主役脇役のキャラの立て方といい、謎や伏線の散りばめ方といい、やはりこの人は一流だなと感じさせられる。
 この『DRAGONBUSTER』は次巻で完結するらしいので、おおかたハッピーエンドにはならないだろうと予想しつつ、どう落ちをつけるのか楽しみだ。「龍盤」シリーズの他作品にも期待期待。