書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』

天使の蝶 (光文社古典新訳文庫)

天使の蝶 (光文社古典新訳文庫)

その場合、生体構造学担当官が造られた、じつに精巧な生物の頭部に確保した空洞には、結合組織を詰め込むか、あるいは予備の胃に充てるか……そうだ、余分な志望を蓄えるスペースにするのが最適かもしれません。(「創世記第六日」、309ページ)

 イタリアの作家プリーモ・レーヴィの短編集。全部で15編、ひとつひとつの作品はわりと短い。また、アメリカのNATCA社の営業マンのシンプソン氏が珍妙な機械を売りにくるところから始まる連作ふうな話がいくつかある。

 珍妙な機械やシステムと、社会・文明風刺な内容が合わさって、古き良きSFの風味を出していると思う。能天気な雰囲気に、思わず脱力してしまうオチ、それらと毒気がいい感じのバランスで、読んでいて何度もニヤリとさせられた。たとえば引用文の「創世記第六日」は、地球に新たに社会性や理性を持つ<ヒト>という種を登場させるにあたって、それをどういう生物にすべきか(爬虫類か鳥類かそれとも節足動物か)、アーリマンや水大臣(ポセイドン?)らがああでもないこうでもないと議論する話。企業で製品をデザインする会議かなにかのような雰囲気が楽しい。