書物を積む者はやがて人生を積むだろう

和書を積んだり漢籍を積んだり和ゲーを積んだり洋ゲーを積んだり、蛇や魚を撫でたりする。

アガサ・クリスティー『ねずみとり』

 実はこれが初クリスティー。なんでわざわざ戯曲から入ったかといえば、ブックオフで百円だったから。
 アガサ・クリスティーというともう古典作家だと思っていたけど、改めて略歴を見ると1976年まで存命だったんだな。まだ著作権が切れてすらいない人だったとは。

では、この中でだれかが殺されたとしても、それは自分のせいですからね。(87ページ)

 ロールストン夫妻は叔母の遺産の山荘を利用して民宿を開業するが、その初日から大雪に見舞われる。夫妻と、宿泊にやってきた五人の客人は、雪のために外出ができなくなる。そこへスキーに乗った刑事が現れる。

 陸の孤島と化した雪の山荘に、奇妙な泊り客たち。ベタベタな舞台立てだが、クリスティーはさすがミステリの女王と呼ばれるだけあって、人物は最初の台詞を吐いた瞬間から性格がすぐつかめるし(ハイテンションな建築家クリストファと、ユーモラスで不気味な外国人パラビチーニのキャラクターは特に気に入った)、彼ら相互の会話も実に面白い。事件が起こるのは作品の半分も過ぎたところなのだが、そこまでが退屈かというとそんなことは全くないあたり大したものだと思う。
 このごろどうとでも演出できそうな現代劇ばかり読んできたせいか、読みはじめのうちはト書きが多すぎてとっつきにいように感じたけれど、すぐ慣れた。