エミール・ゾラ『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』
ぐぐってみたら「ルーゴン=マッカール叢書」の感想を書いているブログがけっこう増えてるね。いいことだ。これから叢書に挑戦しようという人には『パリの胃袋』『ごった煮』または傑作『ジェルミナール』あたりから入るのがお薦めです。『居酒屋』『ナナ』はちょっととっつきづらいかもしれない。
ウージェーヌ・ルーゴン閣下―「ルーゴン=マッカール叢書」〈第6巻〉 (ルーゴン・マッカール叢書 第 6巻)
- 作者: エミールゾラ,Zola Emile,小田光雄
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2009/03/01
- メディア: 単行本
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「私は自分の力だけを頼った。あなたは……」(438ページ)
「ルーゴン=マッカール叢書」第六巻。ナポレオン三世の腹心の大臣として権力を振るう、ウージェーヌ・ルーゴンの栄光と没落、そして彼の弟子とも仇敵ともなるイタリア娘・クロランドの暗躍を描く。
帰国してからすぐ買って読んだりやめたり、間に他の本を挟んだりしたものの、かれこれ二ヶ月以上かかった計算か。ずいぶん緩慢な読書になってしまった、こういう小説は一気に読んだほうが楽しめると思うんだが……まあ私の調子が悪くて読みどころを読み落としていたのかもしれないけれど、正直けっこうきつい読書だった。叢書は全部読む、という目標がなければ中断していたかもしれない。
クライマックスに至るまでの溜めが長すぎる気が。ウージェーヌが自身の虚栄心や何かのために、使えない仲間に足を引っ張られる話がやたらと多い。ここらあたりの話では、ウージェーヌが勝っても負けてもいまいちすっきりしない。とはいえクライマックスたる第十三章の盛り上がりは流石で、クロランドとウージェーヌの対決と、その周りで進行するチャリティー・バザー(皇后が支援している)の熱狂の描写は冴えまくっている。
終章では政界の中心に復活したウージェーヌが、議会で演説するシーンが描かれる。さすが叢書の主人公だけあって、この男も叩きのめされても立ち上がれる根性の持ち主だったらしい。権力への渇望のために政治家をやっているような俗物だし、普通に考えてこんな奴が復活しても嬉しくないはずなのだが(言ってること変わってるし)、十三章での惨敗ぶりを見てこの復活を見ると、なんだかカタルシスを感じてしまうのが不思議。